2012年05月19日

コーイ・ハーリンゲンに見る、ピンチョンの音楽趣味

『LAヴァイス』で、ドックが救済を図るコーイ。
ピンチョンの小説にコメディアン系音楽家はたくさんでてきますが、
「まじめ心」を吸い寄せるのは『V.』に出てきた黒人プレイヤー、マクリンティック・スフィア以来かもしれない。

そのコーイ・ハーリンゲンが信奉する一人が、スタン・ゲッツ。
サンセット大通りの〈オ・カンガセーロ〉というブラジル音楽の店で、コーイが吹いていた「デサフィナード」( p.220)をスタンの演奏でどうぞ――


ちなみにこの〈O Cangaceiro〉という店名ブラジルの西部劇映画(1954)のタイトルからとったらしい。カンガセイロは「悪漢」という意味で、一味が誘拐してきた女教師を愛してしまうテオドロという名前の悪漢が主人公であるようです。アメリカのウェスタンに影響されながら、ブラジルという国をきちんと描いていると imbd の紹介にありました。映画自体、抜粋が載っています。


で、このバーで「ヒッピーではない女性」が

"It Never Entered My MInd"

を歌います。 ドックとコーイのセンチメントを刺激してやまないこの歌、
そうですね、ジュリー・ロンドンの歌でいかがでしょうか。
(マイルズ・デイヴィスの演奏もすぐ見つかります)



Once I laughed when I heard you saying
that I'd be playing solitaire,
uneasy in my easy chair.
It never entered my mind.

Once you told me I was mistaken,
that I'd awaken with the sun
and order orange juice for one.
It never entered my mind.

You have what I lack myself
and now I even have to scratch my back myself.

Once you warned me that if you scorned me
I'd sing the maiden's prayer again
and wish that you where there again
to get into my hair again.
It never entered my mind.



もうひとつ──
9章のザ・ボーズの屋敷でコーイが練習していた「Donna Lee」、これもお聞きください。
最初のレコーディングはチャーリー・パーカー・クインテットで、録音日は1947年5月8日。そう、これも5月8日、ピンチョンの誕生日(10歳)。

 

  Charlie Parker (alto sax)  Miles Davis (trumpet)

   Bud Powell (piano) Tommy Potter (bass)

 

http://www.youtube.com/watch?v=hANODMX9c5g

   Max Roach (drums)

posted by ys at 14:53| ピンチョン通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月16日

学術批評無料情報誌の充実:『REPRE』no.15

表象文化論学会」が創立7年目にして、いよいよ輝きだしたなあという印象をサトチョンは持っています。幕末の出来事を学ぶまでもなく、世の中を再始動させるときは、場をつくり、若くて優れたヴィジョンを束ねるのが一番──ということを、このごろ、特に1970年代生まれの世代の活躍を見るにつけ実感するのですね。

門林岳史さんが中心になって編集している『REPRE』のセンスのよさ+中身の充実も、比類、ないでしょう(あったらすぐにチェックしますので教えていただきたい)。
小特集「メタモルフォーゼ」
 学会誌『表象』と連動しての対談「森村泰昌とダムタイプ」
 ファッション批評誌『fashionista』についてインタビュー
 ベッティーニ氏講演会報告
 研究ノート「メタモルフォーゼとしてのファッション」(平芳裕子)
      「メタモルフォーゼとメタフュジーク」(串田純一)
トピックス → 第3回表象文化論学会賞受賞者
       ほか3件
新刊紹介:東浩紀、岡田温司、岡本源太、桑野隆、長谷川祐子の新著はすべて紹介文つき。
     その他共同執筆企画や翻訳書も紹介文つきで載っています。
posted by ys at 04:57| イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月14日

改めて、新ブログのお披露目 

『重力の虹』の知識サイトとしてのブログを、こちらで展開中です。


 


http://gravitysrainbow.seesaa.net/


 

 右欄の Link からも飛んでいけます。

 


 そちらには、英語の情報サイトのリンクも張ってあります。ピンチョンに本格的に関心のあるかたの参入を歓迎します。


 去年このブログに書いていた『重力の虹』の情報や訳例も、だんだん移し替えていきましょう。


 


 それと、どうもこういうサイトには、フェイスブックのようなコメント返しというキャジュアルな方法は似合いません。


 双方向コミュニケーションの必要は感じています。メールアドレスをプロフィールに載せていますのでお使いください。

posted by ys at 07:08| ピンチョン通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月11日

『LAヴァイス』のソングリスト(1)


66ページ
スコットたちのバンド、The Beer が練習していた "The Big Valley" のテーマソングです。
http://www.youtube.com/watch?v=Pg3HcxYcbog
この、ジャジャッジャジャをエレキギターでやり、それにボーカルをつけるという、センスあふるるオバカぶりに乾杯。

82ページ、
ウルフマン邸に向かう途中、この曲が カーラジオに流れてきたので、ドックは大音量ヴィブラソニックのスイッチを入れたのだと。
"Bang Bang" by The Bonzo Dog Band
http://www.youtube.com/watch?v=jVkDKL0BX-4
この歌「キル・ビル」のオープニングでしたね。


アイアン・バタフライ(129)といえば「イン・ア・ガダダヴィダ」!  これをシンプソンズ・バージョンで。
http://www.youtube.com/watch?v=0PyBWLALFLQ

132ページ、
同じくブルー・チアーの十八番「サマータイム・ブルース」
http://www.youtube.com/watch?v=nU5uDozoSSM

144ページ あまりにも「いかにも」な、Electric Prunes "Too Much to Dream Last Night"
http://www.youtube.com/watch?v=RrBbWXZPmMY&feature=related


サーフの本道に戻って──
これは「ロレンス・ウェルク・ショー」の映像です。
シャンテイズの "Pipeline"
http://www.youtube.com/watch?v=j09C8clJaXo


そして、これをピンチョンが使わない手はない。トラッシュメンの「サーフィン・バード」 これは「アメリカン・バンドスタンド」の映像から(司会のDick Clarkさん、最近ご逝去されました)
http://www.youtube.com/watch?v=6GizTr6QLfc&feature=related
キューブリックが「フルメタル・ジャケット」で使っていて、それも検索できます。

ジョニー&ザ・ハリケーンズ。リーダーのジョニー・パリスがサックスという変わり種ですが、「レッドリバー・バレー」のサックス、なかなかです。
「バンブー」というのはこういう曲。
http://www.youtube.com/watch?v=2W_jn6Ewuwg


9章の冒頭、ノンストップのサイケデリック・サーフ特集に、
ドックが控えめながら趣味のいいコメントを付け加えていました。(174ページ)
チープでありながら趣味がいいし、実力もしっかりある、The Olympics などはそこがすばらしい。(ビートルズがカバーしているバージョンも見つかります)
The Olympics の"Shimmy like Kate"
http://www.youtube.com/watch?v=0cvubF1xm4g
ちなみに彼らには、「私立探偵」Pivate Eye という歌もありました。
http://www.youtube.com/watch?v=mhH3wOZiUno

デニスが夢中な「テキーラ」は今、日本の高校のブラバンの定番ですか?
ザ・チャンプスのオリジナル感覚を思い出しましょうや。
http://www.youtube.com/watch?v=c1nwT4DV58A&feature=related

上のふたつとも、ロックンロールがチープだった時代のものです。
だめです、人間も、音楽も、偉くなっては。
posted by ys at 21:06| ピンチョン通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月10日

『LAヴァイス』登場人物一覧 改訂2版


5月13日 表を pdf ファイルと交換しました。
     これを、クリックすると大きく現れます。
     ↓
  登場人物.pdf


5月11日、エラー訂正&バージョンアップしました。

『LAヴァイス』、なかなか、登場人物の絡みが複雑です。
僕も訳しながら、脳内の RAM を増設したくなりました。

こんな形に並べてみたら、助けになると思い、エクセル(実はマックの numbers)
で書いてみました。誰が誰だか思い出せればいいと思い、それぞれの説明はいれません。
また、距離が遠くても繋がっている場合がありますが、線で結ぶのはやめました。

どうぞ、活用してください。
posted by ys at 22:03| ピンチョン通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月08日

Happy Birthday, Mr. Pynchon. 

5月8日。トムは75歳の誕生日を迎えました。



ロスに Trystero というコーヒーショップがあって、ただのピンチョン・ファンの人がやってるんですが、そこは今日、エスプレソが無料なんだそうです。
住所は、
2974 Glendale Blvd., Atwater Village; (323) 913-0204.

http://blogs.laweekly.com/squidink/2012/05/free_espresso_for_pynchons_bir.php

ピンチョンと誕生日が同じ人、いろいろいました。

アメリカ大統領、ハリー・トルーマン(+34歳)
文芸批評家、エドマンド・ウィルソン(+33歳)
映画監督、ロベルト・ロッセリーニ(+31歳)
ブルーズシンガー、ロバジョンことロバート・ジョンソン(+26歳)
詩人、エコロジスト、ゲーリー・スナイダー(+7歳)
ボクサー、ソニー・リストン(+5歳)
ジャズ・ミュージシャン、キース・ジャレット(-8歳)

ドイツ空軍による英国空襲が始まったのはトムが4歳の誕生日
VEデイ:第二次大戦で連合国が正式に勝利したのはトムが8歳の誕生日。

『LAヴァイス』の最後のシーンは、あとがきにも書きましたが、42年前の5月8日のことです。
翌日1970年5月9日づけのビルボード・チャートです。

#1── Guess Who: "American Woman"
#2──Jackson Five: "ABC"
#3──The Beatles: "Let It Be"
posted by ys at 21:56| ピンチョン通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月05日

諏訪部浩一『「マルタの鷹」講義』

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諏訪部浩一はあとがきで、
「外国文学研究者として極めて「普通」な手続きを重ねていく過程をそのまま見せる事は、私が何を学んできたかを(あるいは不勉強を)露呈させてしまうはず」
とし、
「研究者が「普通」のことをやればこの程度のことは可能なのだという点で、本書が一定の水準を示せていればと願わずにはいられない」
と謙虚に自負する。

このクォリティは普通でしょ、と言えるところがいい。

21世紀の東大英文科准教授、何でアピールしてくれるのかと思ったら、『マルタの鷹』の精読だった。語注つき、豊富な文献へのレファレンスつき。一章ずつ、飽きさせずに読ませていくフォーマット。大学には──特に外国文学の界隈には──あなたは何のプロですかと訊きたくなる人が多く住んでいるが、ここに読みのプロを自覚している人がいた。

諏訪部より上の世代に、普通でないことを言って注目を集めようとする風潮があった。「AはBである」という大胆なメタフォアを振りかざし、A=Bと信じるところから生じるロマンチックな誤読の中へ読者を引きこもうとするタイプの評論。この本は、それらとははっきりトーンを異にする。

第10章について諏訪部が語り出すのは、探偵サム・スペードが、みずから惹かれている女、ブリジットの部屋を捜査するシーンをいかに描いているかということだ。

 
長い引用となってしまったが、虚飾を省いた(副詞が一つもない)平易な英文であり、単調な文章とさえいい得るだろう。
 だがこの引用文のポイントは、まさにその「平易」で「単調」なところにある。つまり、スペードという「探偵」の仕事とは、一つ一つをとってみれば「平易」で「単調」しかない作業の積み重ねであることが、そうした文体によって表象されているわけだ。


最初に評者が注目した「普通」という言葉が、ここでは「平易」と言い換えられ、ある意味とても複雑な人物であるサムの、基盤をなす倫理性として提示されている。

『マルタの鷹』という、文学の授業としてはきわめて個性の強い作品を扱いながら、本書が、最大多数の学生への通じやすさということにこだわり、その意味すこぶる教育的な出来映えになっているのは、サムのプロフェショナリズムへの愛着と信頼が基にあるからなのだろう。

 普通に平易なもの──ストレートなもの──は、ヒップではない。普通以上を志向する優秀な若者の反発を招かずに「普通」を貫き「この程度のことは〈普通〉の守備範囲だよ」と言ってのける。これはあっぱれであると思う。

もっとも彼は「普通」を超えて「いささか大きな読み」もやっている。
いろいろあるが、一つだけ。シャーロック・ホームズに代表される古典的探偵小説に倦怠のムードが支配的であることに触れて、彼は言う:

探偵の「倦怠」は、警察が代表するようなモダンな合理性からの「逸脱」の証であり、「超越」のそれではない。だから探偵が警察を嘲笑するとき、その「笑い」はむしろ自嘲と考えるべきなのだ。[だが探偵の名推理が、単に胸を躍らせる娯楽としてだらしなく消費してしまうと]探偵小説は文学性を失い、通俗的なデカダンス通俗的なデカダンスに相応しい低度の、微温的なシニシズム/ポストモダニズムに覆われてしまう。
(中略)
「理性の時代」からの「ズレ」としてポーの探偵小説が生まれたのだとすれば、その「ズレ」自体が紋切り型となってしまった時代に、そこからの「ズレ」としてハメットの探偵が生まれたのではないか、ということだ。(109ページ)


さらに次のページで「ハードボイルド探偵小説は伝統的探偵小説の文学的嫡子」という言い方もしている。

明快だ。では、ハメットを愛し、チャンドラーを愛し、ハードボイルドとは一見逆向きの、「ラリラリ探偵」ドック・スポルテッロを造形したピンチョンは、ハメットの探偵からの、いかなるズラシをやってのけたのか。

 サトチョン自身にはまだよく考えがまとまっていない。だがこの本を読みながら、ピッピーとしてのヤワなところと、探偵としての有能さ、パラノイアックであろうともアメリカの暗部の機構をまるごと意識しているらしいこの探偵と、ハードボイルド・ヒーローとの連続/不連続を考えてみたくなった。
 諏訪部浩一は『Inherent Vice』をどう読むか。急がせたりはしないので、いつかゆっくり訊かせてほしい。

posted by ys at 17:51| いただいた本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月03日

みどりさん、ボクおひまです。


5月4日(金) 6:30 PM〜 「みどりの日のそよ風たち」
      RadioTAKASAKI FM 720 ”Air Place”

五月。みどり。はい、五月みどりです! といえば
「おひまなら来てね」
 この人を、40代、50代、60代(そして今は73歳)、でしか知らない方へ、
 21歳のみどりさんの歌声をお届けしましょう。



「みどり」の歌で僕がまず一番に思い出すのが「みどりのそよ風」
 これをレインブック(実質)山本容子さんの歌で。

 ところで「つまみなつむて」って、幼少のころ、ぼくは
 「つぶらなひとみ」と同じシンタクスで捉えていました。
 「つむて」って「オツムに乗せた手」のことかな?
 「つまみな」って、みどりのそよ風的に可愛い、という意味なのかな。
 遠くからお母さんの呼ぶ声が聞こえたり。't's Mommy!

GREEN DAYS by 槇原敬之
 スーザン・ボイルで騒ぐじゃないよ。
 日本にはマッキーがいた。平成のまっすぐな日本のビート。
 http://www.youtube.com/watch?v=WGU6jh_457Y

"Green Sleeves" 16世紀のイングランドの古謡を、『Great Songs of America』に入っている マギー・グリフィンの歌で。



お別れは
"Green Fields" を綾戸智恵のソウルフルなバージョンでいきましょう。
http://www.youtube.com/watch?v=P2CvGulHa8s

2012年05月02日

連載「エイゴができないビョー」

日本の英語のダメなところを長年観察してきたものとして、どこがどうダメなのかを診断し、治療法を提示することをしなくてはいけないなあと思っています。

英語教育改革者として名を馳せた日本人って、いないんですよね。
議論したり、本を書いて売れたりする人は人はいるんですけどね。
英語教育問題を専門とする問題業界のスター・ライターとか、いやですよね。

はい、サトチョンは
『English Journal』 編集長の永井さんのお誘いで、4月号から連載エッセイを書いています。

連載タイトルが
英語ができない病
エ イ ゴ ガ デ キ ナ イ ビョー、
とフラットなアクセントで読みます。
その病気は、ほんとに英語ができないんじゃなくて、
「英語をする」ように見せかけて日本語の別なことばかりやっていたり、「英語をするぞ」と思い立った先生や生徒を、まわりからよってたかって阻止するようなネガティブな環境と、それを支えるわたしたちの思い込みの病理のことをいっています。

各回のタイトルは──
第1回「誤った思い込みを振り落とせ」

第2回「「日本人としてのふつう」から離陸する」

第3回「教室から「間違い」をなくそう」
 *本来、ことばに「間違い」はない。間違いを咎めるような学習空間を排除しよう、ということです。

そして、昨日入稿しました。
第4回「スッポンからスッポンポンへ」
 日本語はスッポンのように、英語に吸い付いて、どんどん日本語に吸収してしまう。その吸い付きをやめて、もっとスッポンポンな心で英語に接しようという提言です。どうぞ、よろしく。
posted by ys at 10:53| Comment(0) | 教え直そう、日本の英語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月01日

「昭和晩年、おんなの絶唱」──ラジオ高崎オンエアー

ラジタカ、紹介ができずいましたが、今年も、田野内明美さんと毎週やってきました。

初めての試みですが、番組自体を切り貼りしてみましたので、
ブツ切れでお聞き苦しいでしょうが、どうぞお楽しみください。

3月16日(金) 6:30 PM〜 「おんなの絶唱」
      RadioTAKASAKI FM 720 ”Air Place”

@八代亜紀 「おんな港町」(1977) w. 二条冬詩夫 m. 伊藤雪彦
A都はるみ 「雨やどり」 (1977) w. 阿久悠 m. 小林亜星

八代、都.m4a

B石川さゆり「沈丁花」  (1978)w. 東海林良 m. 大野克夫

石川.m4a

C研ナオコ 「かもめはかもめ」(1978) w&m 中島みゆき

研.m4a

D美空ひばり「みだれ髪」 (1988)w. 星野哲郎 m. 船村徹

美空.m4a
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