2014年08月18日

一筋の叫びが

  新訳の最初の文です。原文はアメリカ文学の メモラブルな first sentence としてよく引用されるので、記憶に残るリズムがほしかった。作文であれ翻訳であれ、冒頭はなかなかリズムが摑めないもので、ここは最後に訳し直しました。


 一筋の叫びが空を裂いて飛んでくる。前にもあった、だが今のは何とも比べようがない。

   A screaming comes across the sky.  It has happened before, but there is nothing to compare it to now.

 新訳の最後のセンテンスです。おっとカタカナかよ。はい、左様で。
  ナウ、エヴリバディ−−
posted by ys at 07:01| ピンチョン通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月13日

「虹」の上/下

『重力の虹』いよいよ手を離れました。発射に先立つ「前段階 VORSTUFE」のボタンが押されます、おお。

“Räumen” cries Captain Blicero.
はいはい、サトチョンも、ブリツェロ大尉を真似て、決然とロケットから離れましょう。

中には自分の愛する者が乗っています。

ページ数は

[上] 752ページ、

[下] 752ページ(巻末情報ページ込み)で


上/下の〈あいだ〉を、かっこよくすることができたのが嬉しい。

[上]の終わりは

Bianca. . . .

です。グレタ・エルトマンが現実にはスロースロップと交わり、

頭では昔のポルノ的映画のシーンを再現して、絶頂に達しながら、過去に腹に宿った娘の名を口にする。


[下]の始まりは

. . . yes, Bitch──yes, little bitch──poor helpless bitch you’re coming


過去にその映画を見て興奮したペクラーがそのまま家に戻って妻にのし掛かり、

そのときできた娘のことを思いながら、その映画のシーンを頭の中で再現している。

と、いきなり書いても複雑ですが、

[上]は、ある意味、海の彼方のロケット発射で始まり、別の発射の記憶で終わっている。

[下]は、その別の発射が、ロケット開発者において誘発したパラレルな発射の記憶で始まっている。

そして上/下の間の / で、フィルムの世界の内側から外側への跳躍が生じている。

と、こう書いてもやっぱり複雑ですかね。

ともあれ、そもそも一冊で出るべき小説の、日本での慣行ゆえの二巻分かれ、どうせ分かれる運命ならその分割も「表現」に回収したかった。だから、この分かれ方、みなさんにも満足していただけたら、と。

posted by ys at 09:17| ピンチョン通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月02日

再校的日々 psychotic days


昨年11月に入稿を終え、今年4月に大量の直しを入れた初稿ゲラを戻し終えた『重力の虹』、ようやく再校ゲラに校閲部&編集部の書き込みが入って、戻ってきました。

スロースロップが〈ゾーン〉をどのように回ったのかを示す地図、そのほか、図版もお渡ししています。

私からは発表できないことですが、9月下旬の発売を見すえた進行表を進んでいるという感触です。

本文40字 x 20行、下段註1行11字
上下二巻合計 1500ページ
ほどに収まりそうです。

話はめちゃくちゃ高尚で、めちゃくちゃお下劣で、めちゃくちゃ濃密で、めちゃくちゃブットんでること
これは言わずもがなのことですね。
posted by ys at 10:20| ピンチョン通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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