2010年08月23日

GR61 ピンチョンの言葉遊び

『重力の虹』の数々の言葉遊びの中から、大がかりなものをひとつ紹介しよう。(Penguin版 61ページ)

【問】次の6つの単語を、順番を変えず、読み方や句読点を違えるだけで、6つの別な意味の文にせよ。
You never did the Kenosha Kid

【答】
(1)You never did. The Kenosha Kid. と切れば、ケノーシャ・キッドが署名入りで「あなたはやってません」と言ったことになる。

(2)do the . . . は「〜のリズムを踊る」という意味があるから、「ぼくはツイストもロコモーションも踊ったよ」という若者に対して、"You never did the Keshosha, Kid." というと、「お若いの、ケノーシャは踊ってないだろう」という意味になる。

(3)省略。

(4) アルファベット・ゲーム。ケノーシャ・キッドは可能なすべての単語を綴りましたが、the をやるのを忘れて、こう言われました。──You never did "the," Kenosha Kid.

(5)フィラデルフィアをひやかし、ロチェスターをボロクソに言い、ジョリエットを笑いのめしたあんたにしても、ザ・ケノーシャをからかうことまでしてないでしょう。──You never did the Kenosha kid. (You never kid the Kenosha. の強意文)

(6) (昇天と犠牲を記念する、国をあげての祭りの日。脂が焦げ、血が滴りおち、塩気のある肉が褐色に焦げる・・・)シャーロッツヴィルの子豚はやったな。よし。フォーレストヒルズの子馬は? これもよし(しだいに小さく・・・)ラレードの子羊、オーケー。おいおい、待てよ。なんだこれは、スロースロップ、ケノーシャの子ヤギをやっとらんじゃないか。──You never did the Kenosha kid.

これ以外に、ピンチョンはもっと作っています。『重力の虹』新訳、いずれ出ます。おたのしみに。
posted by ys at 12:21| 『重力の虹』翻訳日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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