2010年08月24日

GR232 ネズミのダンス

1930年代のアメリカのミュージカル。Busby Berkeley 監督の作品をはじめ、女性のおみ脚が幾何学模様をつくるような作品がたくさんあった。

『重力の虹』(ペンギン版 232ページ)では、そんなミュージカルを実験室のネズミたちが演じる。

しっぽを巻いて、伸ばして、菊の花や日輪のパターンを描き、最後は全体がひとつの巨大なハツカネズミ形に収まるという振り付けで。ピンチョンの書いたうたの詞がまた冴えている。

パヴロフランド(ビギン歌謡)
 
 パヴロフランドは春だった        
 おれは迷路をいったりきたり     
 おまえを探して回ってた     
 消毒スプレイ、そよぐなか     
 袋小路の壁の前で   
 おまえも困惑顔だった     
 うう、鼻と鼻を寄せ合って
 学習したのさ、ハートの飛翔を(……)     

このネズミたちはパブロフ派心理学者の実験用である。「数ミリボルトの悲しみが/骨とニューロンに流れてく」というラインもある。この研究室を仕切る男がポインツマン。V2ロケットに対して異常性反応を示す主人公スロースロップの心のメカニズムを解明してノーベル賞をとるんだと意気込んでいる。
posted by ys at 14:59| 『重力の虹』翻訳日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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