この本を送ってくださったのは、岩波書店の田中朋子さんです。
編者の鈴木一誌さんがあとがきで、「フレデリック・ワイズマン監督の本をつくりたい[という]思いを、誰よりも強くもち、持続させたのは田中朋子さんだった」と書いています。う〜ん、そうだったんだろうな、と8年がかりだったというお仕事の現場を、想像させていただきました。

この本は600ページを超え、
第一章に(3日間かけて、34作品それそれを語ってもらった)長篇インタビュー
中央の2,3,4章に評論や鼎談やパースペクティブを与える解説を置いたうえで、さらに
第五章に充実の全39作品それそれについての解説を配しています。
ワイズマンを多角的にかつ、作品のそれぞれに関して具体的に、捉える試みというわけですが、
特に最初の180ページを埋める、舩橋淳によるインタビューは、
ワイズマン氏の実直さが、自身ニューヨークで活躍してきた映画作家の熱い質問によって刺激され、その明晰さは圧倒的です。
これほど澄み切った会話が行われたこと自体に、快感を覚えます。
ブックデザインがまた卓抜。
本屋でこの本に出会うあなたは、黒いフィルムの光沢を持つこのオブジェにゾクゾクさせられるでしょう。