2011年12月31日

菅啓次郎の贈り物

菅啓次郎さんの最初の著書『コロンブスの犬』(1989)は、こんな一節で始まる。

今日はエイプリル・フールだけど、これからいうことは嘘じゃないんだぜ。あした、出発する。ブラジルに行くんだ。さようなら。

同じ年に出た僕の『ラバーソウルの弾みかた』の最初の文−−「実家の押し入れからとんでもないものが出てきた」−−と、ほとんど真逆だ。「ブラジル」対「実家の押し入れ」。「それからあと、どこでどうなるか、さっぱりわからない。さようなら」対「ハロー・ポップス、1966」。

今年管さんから僕に送れられてきたのは−−

1)その『コロンブスの犬』の河出文庫版(写真=港千尋、解説=古川日出男)

2)「Walking 歩行という体験」
 ヒトは歩きながら自分を作ってきた。種としてのヒトがそうだったし、個人としてのぼくもそうだった−−という前書きで始まる、時の厚みと大地と生命でいっぱいの詩で、北海道の〈モエレ沼公園ガラスのピラミッド〉で行われた夏のイヴェントの刊行物。これがとても管々−−いえ、清々しい。

3)その詩と同じスピリットを、解説の言葉にした『野生哲学 アメリカインディアンに学ぶ』(講談社現代新書)小池桂一のマンガによる伝承物語つき

4)詩集の本としては、左右社から、昨年出た『Agend'Ars』 のパート2,『島の水、島の火』をいただいた。
ピンチョンの押し入れにとじこもっていた今年の僕は、これを通して、ああ、そうだ、空は一面の光なのだと、想像の中で同意した。

5)西原理恵子・絵、菅啓次郎訳の『星の王子様』というか『チビ王子』には笑った。

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6)圧巻は、菅啓次郎・野崎歓 編『ろうそくの炎がささやく言葉』
最初に治めてられているのが、谷川俊太郎の「ろうそくがともされた」という詩です。

ろうそくがともされて
いまがむかしのよるにもどった
そよかぜはたちどまり
あおぞらはねむりこんでいる


グラフィック・デザインの凛とした構成を見るかのような言葉の配列。
執筆者の半分くらいとは面識がある。中村和恵さんの二篇、よかったよ。

来年もアウトゴーイングな管さんであることでしょう。真逆をいくつもりはないので、僕も少し、地球を動きましょうかね。
posted by ys at 12:42| Comment(0) | いただいた本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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