2012年04月24日

人々のうた、大研究。

民謡からみた世界音楽──うたの地脈を探る
Folk Song as World Music
ミネルヴァ書房2012年3月刊行

この本は日本のポピュラー音楽研究の拡がりを示す画期的な業績だと思うので、
その内容を以下に詳しく紹介します。

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序章  うたに脈あり…………………………………………………………………………細川周平 
    1 民謡、この面妖なもの
    2 もうひとつのあらすじ 


第I部 民謡を考える──ー概念の形成史

第1章 黎明期の民謡収集・研究とヘルダ──の「民」の概念…………………………阪井葉子
    1 ヘルダーの民謡論と「民」の概念
        「無学で感覚的な民」──古い歌謡へのまなざし
        「野生の民」──はるかな土地へのまなざし
        社会的な距離からみた民
    2 批判者ニコライ
    3 ロマン主義化された「民」の概念──アルニム、ブレンターノとグリム兄弟
    4 「民」概念の変容と第二次大戦後のヘルダー評価

第2章 インドにおける「フォーク」概念の変遷と特徴………………………………井上貴子 
    1 インドの言語政策と「フォーク」概念
    2 サンスクリット語の音楽理論書の記述
    3 英領期における「フォーク」概念の導入
    4 独立後の「フォーク」概念と対応する現地語
        ヒンディー語の場合  タミル語の場合
    5 独立後の「フォーク」の定義と芸能の分類
    6 「フォーク」概念の地域性と政治性

第3章 憂鬱の系譜…………………………………………………………………………大和田俊之
      ──黒人コミュニティ向けの定期刊行物にみる「ブルース」の変遷
    1 憂鬱の研究史
    2 憂鬱の病理学
    3 憂鬱の音楽学
    4 憂鬱のモダ子アイ

第4章 ローマックス父子の活動…………………………………………………………柿沼敏江
       ──「民謡」から「歌唱様式」へ
    1 初期の民謡研究における「民謡」概念
    2 カウボーイ・ソングと黒人の歌
    3 ニューディール時代と『我らが歌の国』
    4 歌唱様式へ
    5 「オーセンティシティ」再考に向けて

第5章 柳田民謡論の可能性……………………………………………………………武田俊輔
       ──歌の発生とその伝承の「場」をめぐって
    1 メディア論としての柳田民謡論
    2 一九二〇〜三〇年代における「民謡」とメディアの位相
    3 「流行眼」と「民謡」と──民謡の「新しさ」と表現の自発性
    4 「民謡」生成の「場」──発生のメカニズムとオーディエンス論
    5 メディアの重層性と「場」への考察

第6章 兼常清佐の民謡論を読む………………………………………………………藤田隆則 
    1 日本音楽研究者としての兼常滑佐
    2 兼常の民謡研究
        兼常の生涯  第二期  第四期  民謡研究の最終地点
        博士論文の概要
    3 民謡旋律のモデル化
        民謡の旋律  基本の三音  基本の三音からの下行と上行
        無造作かつ冗長?  基本の三音から展開するパターン
        曲としての形式  第二効目類別の含意  基本の三音の射程
    4 シラブル間緩急処理
        立論への自己規制  言葉と歌の調和
        言葉の意味がわからなくなる原因  シラブル間緩急処理
        具体的観察と対照の方法
    5 兼常の民謡観
        言語の一種としての民謡  名もない草花としての民謡

第7章 『日本民謡大観』前夜…………………………………………………………島添貴美子
       ──町田嘉章の初期の民謡調査
    1 町田嘉章と民謡
    2 町田の民謡調査
        民謡の「採集」  採集手帳にみる現地調査
    3 『日本民謡集成』にみる資料の整理と分析
        『集成』の目的  柳田民謡分類案の修正  名称の付け替え
        面としての仕事歌の分布

第8章 統合する「民謡」、抵抗する「民謡」……………………………………林 慶花
       ──南北朝鮮における「民謡」概念の相違をめぐって
    1 民族を結ぶ「民謡」という幻想
    2 「民謡」概念の導入
    3 新しい「民謡」創出をめぐる南北朝鮮の歩み
    4 抵抗の記憶を蘇らせる──一九八〇年代の韓国における民衆歌謡運動


第 II 部 民謡を伝える──メディアの役割

第9章 ホールでうたう………………………………………………………………長尾洋子 
       ?大正期における演唱空間の拡大と民謡の位置
    1 はじめての全国民謡大会…
    2 ホールヘの視座
    3 寄席から劇場ヘ──安来節
    4 神田の青年会館、錦輝館、和強楽堂
        追分節の東京進出
        後藤桃水による「準備工作」──追分節から民謡の普及へ
    5 ホールの効用

第10章 沖縄音楽レコードにおける〈媒介者〉の機能…………………………高橋美樹
       ──一九三〇年代・日本コロムビア制作のSP盤を対象として
    1 近代沖縄音楽の録音と〈媒介者〉
    2 レコード会社との媒介
        沖縄音楽レコード制作の経緯  録音された沖縄音楽の主なジャンル
    3 歌手・演有家との媒介
    4 日本コロムビアのレコード制作
        一九三〇年代〜四○年代における制作活動  レコード制作システム
    5 媒介者としての喜舎場永c
    6 沖縄音楽レコードの歴史的意義

第11章 かっぽれ百態………………………………………………………………竹内有一
    1 「かっぽれ」への視座
    2 「かっぽれ」の原拠は何か
        和歌山民謡との関連性  近世の俗謡(はやり歌)との関連性
    3 「かっぽれ」の完成まで
        大道芸で「暢気社会を驚かせてやらう」  大道芸から大芝居へ
        九代目團十郎の「かっぽれ」──歌舞伎台本からわかること
        レコード吹き込み──梅坊主の十八番から伝承芸へ
    4 流転する「かっぽれ」
        陸軍による編曲と吹奏楽  国葬の「かっぽれ」──選曲は正しかった!?
        さらなる越境へ  五線譜出版
        もうひとつの「かっぽれ」──シーボルトの Boo-su-ni kappore
    5 「かっぽれ」の精神──「フラメンコかっぽれ」に継承されたもの

第12章 ハワイの盆踊り歌…………………………………………………………早稲田みな子
       ──日系ディアスポラ文化としての民謡の形成
    1 ハワイの盆踊りの歴史
    2 ハワイ「福島音頭」の変容
       ホノルルの「福島音頭」=「相馬盆唄」=シティー・スタイル
       エヴァとマウイの「福島音頭」=プランテーション・スタイル=「福島盆踊り唄」(?)
    3 ハワイ「岩国音頭」の変容
        日本の「岩国音頭」のレパートリー
        ハワイの「岩国音頭」のレパートリー
        ハワイの「岩国音頭」に残る古い特徴
    4 ホームとつながりつつ変化するディアスポラ文化

第13章 ハワイ日系人の「ホレホレ節」…………………………………………中原ゆかり
       ──ハリー・ウラタの取り組みと影響
    1 「ホレホレ節」の復活とハリー・ウラタ
    2 「ホレホレ節」との出会い
    3 旋律への興味と保存への意欲
    4 正調「ホレホレ節」へ
    5 うたわれる「ホレホレ節」
    6 「ホレホレ節」復活の意味

第14章 歌の実践にみられる「田舎」の創造……………………………………倉田量介
       ──キューバのプント・グァヒーロをめぐって
    1 キューバの民謡
    2 「農民音楽」とは
       種類  楽器  演奏の目的  録音メディアおよび放送メディア
    3 「農民音楽」の実践者
    4 現地の民俗学者による「農民音楽」の解釈をめぐる考察
    5 「農民音楽」を取り巻く今日の環境

第15章 ベネズエラ民謡「ホローポ」の創造……………………………………石橋 純
       ──知識人と民衆知
    1 「民謡」以前──ファンダンゴヘのまなざし
    2 「ベネズエラ民謡」ホローポの誕生
    3 ホローポの民衆知
       楽器編成  和声循環の型と即興演奏  ノリの裏表とその転換
    4 「本物」のホローポ発見と大衆音楽化
       大衆音楽ジャンルとしての「民謡」の成立  民謡ブームの寵児たち
       都市教養層とホローポ
    5 民衆文化をめぐる価値転換
       新しい歌と都市弦楽  ノリの客体化
    6 民衆文化と都会人

第16章 「ダニー・ボーイ」は戦争に行った……………………………………森 博史
        ──歌から立ちあがってくる物語
    1 曲名不詳のメロディから「ロンドンデリー・エア」へ
        「曲名小計」のメロディ
        アイルランド系文化人と「ロンドンデリー・エア」
        イギリス音楽界における「ロンドンデリー・エア」
        曲の出自に対する疑問と探究
    2 「ダニー・ボーイ」とその作詞者ウェザリー
        「ダニー・ボーイ」という詩作品  歌詞に見られるふたつの要素
        失われた第三スタンザ?  バラッドの継承者
    3 合衆国における「ダニー・ボーイ」
        歌手のシューマン=ハインク
        自由公債販促キャンペーン (Liberty Bond Campaign)
        「兵士の母」(Soldier's Mother)
    4 映画『ダニー・ボーイ』と戦争がつくりあげる物語


第 III 部 民謡をつくる──創作と編曲

第17章 一九世紀ブダペストの「民謡」……………………………………………横井雅子
    1 ”まちがって民謡とみなされていた” 歌
    2 当時の ”民謡” をめぐって──一九世紀における民謡集を手がかりに
    3 多様な都市住民のための娯楽と ”民謡” …
       ブダペストの市民たち  新たな市民が欲した ”民謡”
    4 人々が ”民謡” に求めたもの

第18章 バルトーク『子供のために』をめぐって…………………………………伊東信宏
    1 『子供のために』の位置
    2 『子供のために』の成立と版
    3 以前の編曲との比較
    4 第II巻第34番「葬送」
    5 その後の民謡編曲作品

第19章 どうして沖縄ふうなんだろう………………………………………………三井 徹
       ──英系米民謡の旋律変形
    1 沖縄的音階版「プリティ・ポリ−」の譜面
    2 沖縄的音階版の間接音源…
    3 一九二七年のB・F・シェルトン版
    4 一九三七年のE・C・ボール版
    5 シェルトン版とボール版の比較


第20章 〈民謡〉から流行歌へ………………………………………………………松村 洋
       ──タイのラムウォン歌を中心に
    1 タイ歌謡
        王都の歌・地方の歌  プレーン・タイ・サーコン
    2 ラムウォンの誕生
        ラムトーンからラムウォンヘ
        ピブーンソンクラーム政権のワッタナタム政策  ラムウォンの近代性
    3 流行歌とラムウォン
        広報局洋楽団  ルークトゥン歌謡に流れ込んだラムウォン
    4 近代化と伝統歌謡

第21章 ジャズ民謡の系譜……………………………………………………………細川周平
       ──忘れられた雑種音楽
    1 いつもの、それとも新奇な組み合わせ?
    2 鳥取春陽──道頓堀でジャズる
    3 服部良一と門下生──スウィング編曲の完成
    4 杉井幸一──ジャズもタンゴも乗り越えて
    5 ジャズ民謡をめぐって
    6 戦後の流れ──海外のジャズ界との接触
    7 民族性と陳腐性
    8 間歌的・発展的継承
    9 ジャズと民謡の収斂と離散

第22章 三橋美智也とうたごえ運動…………………………………………………輪島裕介
       ──昭和三〇年代における「民謡」の地位
    1 民謡は戦後に隆盛した?   
    2 三橋美智也の民謡調流行歌
       民謡的歌唱法・「望郷」モチーフ・「勤労学生」イメージ
    3 左派・進歩派による流行歌批判と肯定的民謡観
       「俗悪文化」としての「日本調」歌謡  左派・進歩派の「民謡」概念
    4 三橋三智也の民謡観
    5 「民謡」の拡散
       ジャズ/ポピュラーのレパートリーとしての「民謡」
       三橋美智也「達者でナ」(一九六〇年)
       「民謡の時代」としての昭和三〇年代

第23章 三輪眞弘「東の唄」と「ありえたかもしれない民謡」の虚実……………岡田暁生
    1 三輪眞弘と「フィクション」
    2 柴田理論とアルゴリズム
    3 「束の唄」と「日本民謡」の換骨奪胎
    4 「ありえたかもしれない」から「ある」へ
posted by ys at 18:44| Comment(0) | イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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