2012年04月28日

計算が合わないのも、ピンチョンの計算のうち?

『LAヴァイス』066ページに、およそこんなことが書いてある。

スコットはザ・コルヴェアーズというバンドの一員を組んでいけれども、メンバーの半数は北のヴァインランド郡方面へ移住し、残ったのが、スコット(『ヴァインランド』によれば、リードギター兼ボーカル)とドラマーのエルフモントだけだった。

これと、『ヴァインランド』の記述を足すと、ザ・コルヴェアーズは、こんなイメージになります。

スコット・ウーフ(lead guitar, vocal)
ゾイド・ホィーラー(明記されないが多分 side guitar、ときどき vocal)
ヴァン・ミータ (bass)
エルフモント (drums)

「メンバーの半数」というのをどのくらい字句通りに取るかはともかくとして、自然に読めば4人のうち、2人が北へ行ってしまった、と取れる。

その二人とは、『ヴァインランド』によれば、ヴァン・ミータとゾイド。ソイドは片言をしゃべるプレイリーを連れて北への移住を敢行した。

『LAヴァイス』の物語の現在は、どこにも日にちが明記されていないが、背景情報におすべてが。1970年3月~5月であることを示している。

つまり、1970年3月には、ザ・コルヴェアーズの、スコットとエフルモントを残したメンバー半分は、すでにヴァインランドへ去っている。


だが『ヴァインランド』を覗いてみると
1969年1月 ニクソン政権誕生後、
同年5月 バークレイで「ピープルズ・パーク」闘争
その後、
「ロックンロール共和国」建国宣言、24fps がサーフ大学の闘争に参加
闘争崩壊→ フレネシの収容所連行 
→ DLによるフレネシ奪回→ふたりのけんか別れ→ゾイドとの出会い、妊娠、結婚という出来事が60年代崩壊の文脈で描かれ、
これと1984年夏にプレイリーが14歳というサイド情報を合わせると、
5月生まれの牡牛座と明記されているプレイリーの誕生は、1970年5月というふうに画定される。

このズレまたはズラシは何なのか。ピンチョンは、ドック同様、マリワナ性健忘症なのか?

サトチョンの解釈は次の通り──
 フィクションに描かれる出来事を何月何日か、探査できるようにしておきながら、ピンチョンはいつのまにか、それとなく「時空の歪み」をつくるイタズラに凝っている。

Vineland と Inherent Vice 2つの作品の「日付づけ」に凝る者は、あたかもエッシャーの階段を上らされるごとき思いを味わうということか。

Escher-Staircase.jpg
posted by ys at 14:57| Comment(0) | ピンチョン通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。