『LAヴァイス』で、ドックが救済を図るコーイ。
ピンチョンの小説にコメディアン系音楽家はたくさんでてきますが、
「まじめ心」を吸い寄せるのは『V.』に出てきた黒人プレイヤー、マクリンティック・スフィア以来かもしれない。
そのコーイ・ハーリンゲンが信奉する一人が、スタン・ゲッツ。
サンセット大通りの〈オ・カンガセーロ〉というブラジル音楽の店で、コーイが吹いていた「デサフィナード」( p.220)をスタンの演奏でどうぞ――
ちなみにこの〈O Cangaceiro〉という店名ブラジルの西部劇映画(1954)のタイトルからとったらしい。カンガセイロは「悪漢」という意味で、一味が誘拐してきた女教師を愛してしまうテオドロという名前の悪漢が主人公であるようです。アメリカのウェスタンに影響されながら、ブラジルという国をきちんと描いていると imbd の紹介にありました。映画自体、抜粋が載っています。
で、このバーで「ヒッピーではない女性」が
"It Never Entered My MInd"
を歌います。 ドックとコーイのセンチメントを刺激してやまないこの歌、
そうですね、ジュリー・ロンドンの歌でいかがでしょうか。
(マイルズ・デイヴィスの演奏もすぐ見つかります)
Once I laughed when I heard you saying
that I'd be playing solitaire,
uneasy in my easy chair.
It never entered my mind.
Once you told me I was mistaken,
that I'd awaken with the sun
and order orange juice for one.
It never entered my mind.
You have what I lack myself
and now I even have to scratch my back myself.
Once you warned me that if you scorned me
I'd sing the maiden's prayer again
and wish that you where there again
to get into my hair again.
It never entered my mind.
もうひとつ──
9章のザ・ボーズの屋敷でコーイが練習していた「Donna Lee」、これもお聞きください。
最初のレコーディングはチャーリー・パーカー・クインテットで、録音日は1947年5月8日。そう、これも5月8日、ピンチョンの誕生日(10歳)。
Charlie Parker (alto sax) Miles Davis (trumpet)
Bud Powell (piano) Tommy Potter (bass)
http://www.youtube.com/watch?v=hANODMX9c5g
Max Roach (drums)