『重力の虹』いよいよ手を離れました。発射に先立つ「前段階 VORSTUFE」のボタンが押されます、おお。
“Räumen” cries Captain Blicero.
はいはい、サトチョンも、ブリツェロ大尉を真似て、決然とロケットから離れましょう。
中には自分の愛する者が乗っています。
ページ数は
[上] 752ページ、
[下] 752ページ(巻末情報ページ込み)で
上/下の〈あいだ〉を、かっこよくすることができたのが嬉しい。
[上]の終わりは
Bianca. . . .
です。グレタ・エルトマンが現実にはスロースロップと交わり、
頭では昔のポルノ的映画のシーンを再現して、絶頂に達しながら、過去に腹に宿った娘の名を口にする。
[下]の始まりは
. . . yes, Bitch──yes, little bitch──poor helpless bitch you’re coming
過去にその映画を見て興奮したペクラーがそのまま家に戻って妻にのし掛かり、
そのときできた娘のことを思いながら、その映画のシーンを頭の中で再現している。
と、いきなり書いても複雑ですが、
[上]は、ある意味、海の彼方のロケット発射で始まり、別の発射の記憶で終わっている。
[下]は、その別の発射が、ロケット開発者において誘発したパラレルな発射の記憶で始まっている。
そして上/下の間の / で、フィルムの世界の内側から外側への跳躍が生じている。
と、こう書いてもやっぱり複雑ですかね。
ともあれ、そもそも一冊で出るべき小説の、日本での慣行ゆえの二巻分かれ、どうせ分かれる運命ならその分割も「表現」に回収したかった。だから、この分かれ方、みなさんにも満足していただけたら、と。