2014年11月19日

『LAヴァイス』Inherent Vice の映画を見てきました。

もう一ヶ月以上も前のことですが、ニューヨーク・フィルム・フェスで先行上映されたポール・トマス・アンダースン監督の新作『Inherent Vice』を見てきました。ピンチョンの小説の初の映画化で、二週間の会期の真ん中、土曜の晩にフィーチャーされる「センター・ピース」の扱いでした。豪華キャスト、巨悪を背景にしたズッコケ・ミステリーとして、ノスタルジーとおふざけ、おかしな会話の連続……その高感度なコメディ感覚は、アカデミー賞にもいくつか絡んでくるのだろうと思われます。

inherent-vice-poster-quad.png


見て驚いたのは、PTA監督が、原作に可能な限り忠実なフィルムづくりをしたというところ(映画的効果のために、原作の一部だけを取りだして膨らませる作品もありますからね)。それだけに、出演者多数、話はピョンピョン飛んで、やはり原作を読んでいかないと、何の話かはわからんでしょうね。


オフィシャル・トレーラー

http://www.youtube.com/watch?v=wZfs22E7JmI


この予告編、やや詳細に解説してみましょう。


0:00●ロスのサウス・ビーチの風景。ここの坂にある小ぶりの貸家の二階にドックは住んでいるという設定。(60年代末にピンチョンが住んで『重力の虹』を書いていた家と、描写がピタリ一致します。)

0:05●ドック・スポーテッロのところに、昔の恋人シャスタが訪れた。[訳本『LAヴァイス』p. 10-11

0:11●不動産業界の実力者ミッキー・ウルフマンの勢力拡大を伝える新聞記事/ミッキーの妻スローンと、その愛人リッグズ[p.88あたり]

0:16●ドックがミッキーの最新の開発地チャンネル・ヴュー・エステイツに行って、ウルフマンのボディガードをしているバイカーたちと出会う。[p. 35]/シャスタ ‘I need your help, Doc.”p.10


〈そこまでのナレーション〉

「ビーチの静かな夜に、どこからともなく昔の彼女が現れて、今付きあってる宅地デベロッパーの彼氏と、その妻、妻の愛人の話、そして彼氏を誘拐して精神病院へ入れてしまう策謀のことを話しだしたとしたら、そんな依頼は受けないほうがいいわよねぇ、フツー」


0:24●ダウンタウンのロス市警にて

0:30●因縁のビッグフット刑事から ‘Michael Z. Wolfmann”の名を告げられ、ドックが頼るオタク系弁護士ソンチョも “Micky Wolfmann”の名を口にし[p. 43-46あたり]、お化粧中のリートおばさん(ドックの実の叔母、不動産屋[p.19-20])からは、「あの人正式にはユダヤ人だけど、ナチになりたがっている」とのコメント。そしてマッサージ嬢のジェイドが「あの人たちと関係することはないわ」と警告。

0:45●ヘロインで死んだはずのサックス吹きのコーイの妻が、彼の移ったポラロイド写真の束をドックに渡すシーン。[p. 64リート叔母さん「まあ、彼よりはナチの方が扱いやすかもしれないね」/

ドックが今付きあっている地方検事補のペニー。FBIから調査に来た二人もいる[102-]/

0:59ある店でプレイしていたコーイ[p. 221]/エイドリアン・プロシア “Wrong answer.” p. 433]/ミッキーのネクタイ専用クローゼットでルスに言い寄られる変装中のドック[p. 91]/歯科医のブラットノイドとザンドラ[p. 233あたり]/ソンチョと/シャスタ/スローンの肢体とルスのお尻[p. 87]/更生施設「クリスキロドン」での幻想的な晩餐風景

1:08●ビッグフットがリトル・トーキョーの食堂で、 “Chotto Ken-ichiro, motto pan-keiku, motto pan-keiku, hai, hai, hai.”

1:26ドックがエイドリアンをやっつける。[p. 446]

1:40 挿入歌サム・クックの「ワンダフル・ワールド」(1960

1:42エイドリアンの建物の地下、ビッグフット登場[p. 447]/最初のシーンのシャスタ[p. 10]/最初に逮捕されたドック/死体のスラップスティック/ブラットノイドのおふざけ/運び込まれた死体(この袋の中でピンチョンが「カメオ出演」した、との噂あり)/ドックのオフィスに依頼にきたタリク[p.28]/マッサージ・パーラーで殴られたドック[p. 37


最後のナレーション:Coming just in time for Christmas. 全米公開は1212日です。

日本の公開は決まっていませんが、間違いなく来るでしょう。この機に乗じて、『LAヴァイス』文庫化させたい。こんなにもクラクラさせてくれる小説家に、特別なオーラは必要ない。「全小説」シリーズの定価、やっぱ高すぎますぜ。

posted by ys at 10:57| ピンチョン通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。