2011年06月13日

『競売ナンバー49の叫び』の新訳は「後押しガイド」付き

「『競売ナンバー49の叫び』は意味(または意味する可能性)のつながりによって成り立っているテクストである。
 推理小説のようだが、最終的に謎が解けるわけではない。むしろ深まる。最初単純と見えた状況がどんどん波紋を広げていく。ただ情報量や複雑さが増していくというのとは違う。なにやら日常的な認識とは別レベルの、魔術的というか何というのか、よりディープな精神の穴蔵へ引き落とされていくような読書感。
 この作品の本邦初訳を手がけられた志村正雄氏の「解注」――ちくま文庫版(2010)では54ページ180項目――に新訳者として加えるところは少ない。新訳では、各部分および行間のつながりが見えやすいように留意したが、それはこのままこの手引き執筆方針でもあって、とにかく作品の背後に結ばれていくだろう大きなつながりを指さすことに終始した。みなさんの読みを(誘導ではなく)誘発する一助になれたらと思う。
 さいわい、この極めて挑発的な小説に挑発された世界のプロの読者たちが、長年かけて「解釈共同体」のようなものを作ってきた。累積された読解を総ざらいしたような、原作より長い「虎の巻」も出版されている(J. Kerry Grant, A Companion to The Crying of Lot 49, 1994)。突っ込んだ議論を必要する方には、すでに数多い他の文献やサイトにも通じておられるだろう。日本語でも木原善彦著『トマス・ピンチョン――無政府主義的奇跡の宇宙』(2001)の第3章のように、この小説の本質をコンパクトについた説明も出回っている。以下における僕の試みも、狙いは同じだ。この小説を楽しもうとする方々を「一歩奥の楽しみ」へ後押しすること。それから先は、どうぞご自由に。」


 という口上を添えて、『競売ナンバー49の叫び』の「49の手引き」の初校を本日返しました。「手引き」全体で60ページくらいになるでしょう。原稿は志村さんスタイルではなく木原さんスタイルで、彼の本の章に書かれている12か13の「手引き」を49に拡張したというイメージでだいたい当たっています。

1、遺産継承 2、塔の中のラプンツェル 3、午前三時の〈シャドー〉 4、人生のメタル・エクステンション…… 47、叫び 48、ロット、 49、49

といった項目が並びます。


posted by ys at 17:11| ピンチョン通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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